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実務家の教える(在来工法木造建築物特別講座)
木工塾
1.木造在来工法の教え方<設計・工法・指導>(第18回WAC研究会テーマ報告より) |
木造在来工法の教え方 建築家中善寺孝敏氏の設計コンセプト(当会元理事長) 木造在来工法は今や各大学の建築科でも教える事が希になっているため、在来工法による木造住宅を十分に理解できず、小屋伏図が描けないなど正しい実施設計図を画ける技術者が設計事務所を含めて少なくなってしまった。 このような現状の中、(NPO法人)木造建築文化総合センターでは在来木造建築の演習講座を開催した。 今回は、当講座において中善寺孝敏氏が教えている木造在来工法住宅の設計実務の内容・考え方について中善寺氏が下記の内容の資料(テキスト)をもとに解説され、メンバーの意見を求められた。 そのなかで、実際に行われた改修住宅物件を含む設計実務プロセスの実例を挙げられた。 1-1.各部材の名称について解説(読めない人が多い)=寝ている部材は柱とは云わないの!、正しく覚えてほしい。 1)垂直材:床束、縁束、柱(管柱・通柱)、小屋束、間柱 2)水平材:土台、大引、根太、軒桁、敷居、鴨居、長押、母屋、棟木、台輪、胴差、 一筋敷居、一筋鴨居、回縁、広木舞、淀、火打(燧)、框(上り框、床框)、足搦、 楯、(窓楯)、窓台 4)ここで、縁側の屋根部(化粧垂木のところなど)の名称を図示。 ・木造平屋建て住宅を断面に分解した「木造骨組・下地・仕上げ理解図」を図示。この図を与え、部材の位置ごとの名称を演習している。 ・軒の先端部の名称:種々の言い方があるので図示。 広木舞、淀、茅負(神社建築)、- - - 1-2.用語の解説:在来木造工法で使われる数ある用語の中から代表的な用語をあげ、理解する。事例: 决り(合决)散り决り)、 猿(寄せ、上げ、下げ、猿頬、猿:雨戸の戸締まりのとき上下左右に動くところ))、猫(車、障子)、蜻蛉、 貝の口(床框の下の少し入っているところ)、根と穂(かきね:生け垣の下の部分、生け垣の上の部分はカキホという。ホが消えてかきねになってしまった。翌檜(あすなろ)、四阿(あずまや:読めない人多い))、三和土(たたき)、東障子(江戸の方、明治以降の話でガラスの入った障子、知らない人多い)、あばた、蟻、尻(石尻:検知石の先のとがった方)、鶡(いすか:元は鳥の名前、口が曲がっている)、蟇股(かえるまた)、一文字(瓦、葺き)、 稲妻、犬釘、芋(目地)、小穴(細いミゾがずっと続いてゆく)、牛梁(丑梁:むくりのついた梁)、卯建、稲子、肘と壺(雌と雄)、下げ芋、 小間返し、胡粉、見付と見込み、小口、注連(しめ)(縄、板)、祝儀敷き、 吸い付き蟻桟、太鼓落とし、蛸、タタラ(踏鞘)、ハゼ(鈎)、端喰(はしばみ) ・・・以下略 いろいろ名称を教えながらやっている。 1-3.屋根の種類を図示解説。[起り(むくり)、反り・照りを含めて] 1-4.知らないと困る各部材の断面寸法をあげる 土台、管柱、通し柱、床束、大引、根太(@910、@455-)、 間柱(真壁、大壁)、 頭繋ぎ、小屋梁の成・陸梁、丸太の末口、 小屋束、母屋、垂木、 2階床根太、 窓台、窓まぐさ、敷居、鴨居、長押、落とし掛け、廻り縁、ドア枠、フローリング厚さ・・・・ 1-5.製図演習問題 T: 1)平面図を1/100で書く。次に詳しい内容を表現した1/50の図面を書く。 更に1/20で書いて例えば和風真壁と洋風大壁の収まりの違いがわかるようにする。 それぞれの縮尺ごとに意図する設計内容を理解検討し、表現する。 2)1/100のプランを構造・構法的に分析し、@基礎伏図(1/100;布基礎と沓石、コンクリートタタキの関係、床下換気口位置)、A床伏せ図(1/100;大引きと根太・火打ちの関係) B小屋伏せ図(たるきを@455で先に描く、母屋を軒桁から@910で描く 母屋を支える梁を@1820以下に入れる、 3)2階建てプランモデル作成(1/100)――この図で、以下、各伏せ図を描いてゆく A.基礎伏せ図を書く順序と方法を具体的に詳しく解説したうえで、基礎伏せ図を作成する。 (図を掲載) B.束立て床伏せ図(1階床伏せ図)を描く順序と方法を具体的に詳しく解説したうえで、実際に床伏図(1/100)を作成する。(図を掲載) トレペを重ねて描くなどのノウハウ。 C.屋根伏せ図の原則について具体的に詳しく解説 ・屋根伏せ図の書き方と順序 事例として、寄棟の屋根伏せ図を作る順序:まず寄せ棟で押さえる→棟の線→谷の線→・・・・・ モデル作図を図示 ・演習:次の各建物に1)切妻、2)寄棟で屋根伏図を描け!:6パタンの平面形の住宅18棟について屋根伏図を描く。 D.梁床伏せ図(2階床伏せ図)を描く順序と書き方を解説 寄棟(屋根の原型)を基に、切妻1、切妻2.入母屋の各タイプ。 モデル作図を図示。更に部材と構法がわかるアイソメ図解を図示。 E.小屋伏せ図(切妻)を描く順序と書き方を詳しく解説 1階小屋伏図、2階床伏図、2階小屋伏図のモデル作図を図示。 F.寄棟の小屋伏図を描く順序と書き方を解説。 棟、降り棟、小屋梁、軒桁、妻桁の関係をわかりやすく図示。 1階及び2階小屋伏図の作図モデルを図示。 以上3ケースくらいやると理解してくる。 よく理解するには3ヶ月くらいかかる。 以上の中善寺氏の教程の話をもとに木造住宅建築設計の問題点や課題について意見交換がなされた。 なお、木工塾の住計画設計事務所 原 氏担当の教程では、品確法準拠の床構面の構法概念及び耐力壁線の考えが導入されている設計法によっている。(原氏) 1-6.野本邸納屋改修工事物件(埼玉県加須市 敷地500坪ほど)引き合い・折衝の次第について 生活空間にも使用していた野本邸納屋建築を改修・再生する物件について引き合い・調査・実測・改修設計・折衝・施主側事情による結論を得るまで、更に最終的には新築案の提示に至る一連のプロセスと終始についてのストーリーを写真・実測図・詳細図を含む改修設計図とともに解説された。 現場の視察し改修が可能であることを先方に伝える。ベンチーマークの入った種々の角度からの現況写真、現況の綿密な把握・実測をもとに現状実測図を作成。改修平面を作成提示して了解をとる。 改修再生設計図として、平面図・展開図・立面図・構造図・既存の柱・梁をそのまま利用した矩形図、インテリアパース・設備図等図面17枚を作成。途中施主の了解を得ながら進めるも、ご両親や年長の親類の方々の反対に会い、改修再生計画は断念となった。 新築案を考えることになり、提示するも最終的にこれも断念し、住宅メーカーに頼むことになった。 すばらしい改修案になるところであったが、若い世代の方が前向きなのに対して、民家再生の値打ちが解らない年長の人が多くその後は見てないが寂しいことだ。 ・ここで、野本邸の改修案について、矩計詳細図をみながら、しばし質疑と意見交換。 1-7.所沢市 大高邸新築工事について、第一回打ち合わせ・ヒアリングから、平面案、エスキース・修正図・展開図・各室説明を経て確認申請に必要な設計図書作成・設備・確認・工務店・見積もり・公庫・金額確定・契約・設計監理・着工・完成に至る一連のプロセスについて日程を交えて説明。 ・野本邸のように設計図ができた段階で、仕事が住宅メーカーへいってしまうケースがいくつもあったし、設計事務所にオーダーで設計を依頼する人が相当に減ってしまった。 ・書籍 中善寺紀子氏著、相模書房刊 私の民家改修日誌「よみがえる民家」を読み、見られた人からは問い合わせが多々ある。 ・構法をきちんと伝えてゆくことが大事である。 ・建築基準法でやっていると説明するのにあいまいなところがでる。大地震がくるとどうなるかの説明がなかなかできない。品確法に基づく耐力壁量は基準法の1.5倍であるが、この違いを施主に意識してもらわないとまずい。 ・「三権分立」の話をしないと一般の施主の方は設計者・設計事務所の役割を理解しない。 設計施工で大工・工務店に頼むことが当然と思われている。 ではその設計図を誰がチェックするのか。工事見積もりは誰がチェックするのか。チェックするのは工務店・業者の方であると思いこんでいる方が多い。 チェックの仕事などをやるのが「立法」の立場ですと説いて、はじめて「では設計をおねがいします」となる。 ・ 以上のように、関連した現在の問題点を含めた論議がひきつづき半時間ほど活発に行われた。 * 中善寺氏が度々説かれる住宅建築の仕事をするうえでの三権分立の内容を以下のように図示された。
立法 行政 作曲家 オーケストラ
以上の中善寺氏のお話をもとに、木造住宅建築設計教育について、問題点や課題など意見交換がなされた。
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